モノづくり日本会議 モノづくり力徹底強化検討会・第8回勉強会「DX時代のモノづくり&サービス⑤」

(2021/5/26 05:00)

DXを通じた意識改革と業務改革

ソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス」におけるビジネスモデルの確立

モノづくり日本会議は4月16日、モノづくり力徹底強化検討会第8回勉強会「DX時代のモノづくり&サービス(5)」として、共同議長会社である安川電機の小笠原浩社長を講師に、オンラインセミナーを開いた。モノづくりの現場における顧客の課題解決をデジタル変革(DX)によって推進している同社のコンセプトや、DXを通じた自社の意識改革・業務改革について、ICT戦略の旗振り役でもある同社長が解説した。

連結70社の経営情報見える化

安川電機 社長 人づくり推進担当 ICT戦略推進室長・小笠原浩氏

今回のタイトルは社長というより、ICT戦略室長という肩書からお話しする。当社はロボットやサーボモーターなど電機系の会社だが、私は大学の情報工学科からIT系で入ってきた。

コロナ禍においてDXが進み、どこの会社もこの1年でウェブ会議やリモートワークが加速的に増え、社員間の距離が感じられなくなり、情報が共有できているのではないか。当社も事業部長と営業本部長らの、情報交換も含むリモート会議が、毎日昼休みに25分間ほど開かれている。

当社は1915年に北九州で創業し、69年には機械と電気を融合させた「メカトロニクス」という造語を打ち出した。現在は売り上げの海外比率が65%で、生産拠点も12カ国28拠点とグローバルだ。コア事業の進化によって、工場の自動化・最適化と、社会の持続的発展に向けた新たなメカトロニクスの応用を、オープンイノベーションによって実現することを2025年に向けたビジョンとしている。

70年に、ノーマン(人間を疎外する無人化)ではない、人間中心の自動化工場「アンマンドファクトリー」を提唱した。これを実現するため、77年に日本初の全電気式産業用ロボットを発表している。産業用ロボットには、人を超える正確性や再現性、スキルの可視化・共有化、高い自在性・柔軟性といったことが求められる。今後拡大していく、デジタルコミュニケーション機器、電気自動車(EV)および関連するバッテリー、米中貿易摩擦によって製造装置が拡大する半導体といった市場でさらに使われていく。

データは世界の共通言語

当社の、工場の自動化を実現するソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス」は、新たな産業自動化革命としてインテグレーテッド、インテリジェント、イノベーティブの順でものごとを考えていこうというコンセプトだ。個別で起きている事象を集めて全体を見渡し、知恵を出して変革しようというもので、必ずしも工場に限ったことではない。当社はライン制御はやらず、セルまでのデータをきちんと集め、エッジとして見えるようにして、データを上位に渡す。上位に上げたデータに対して人工知能(AI)を活用して見える化し、分析して、現場を変える。

そこに最新機器を導入して、人に依存しないモノづくりを徹底して進める。こうした動きは中国が先行しているが、日本の強みとしては徹底した5Sと4M(人、モノ、設備、作業方法)と情報がある。

FA産業の会社として、アイキューブメカトロニクスをキーワードに、モノづくりの提案を行っているが、さらにDXを使った働き方、データをどうつなぐかといったことについて、当社を例に説明したい。

現在、当社なりのDXとして「安川デジタル・トランスフォーメーション」(YDX)を推進している。社長になってすぐに「データを世界の共通言語に」と提唱してきたが、連結70社の経営情報の統合化を柱とし、従業員一人一人の働きをデータ化・統合化して、全社の利益に確実につなげることがデジタル経営の本質と考えている。これを元にアイキューブメカトロニクスの考え方で、各部門のさまざまなデータを見えるようにインテグレーテッドして、グループの技術・生産・販売のあり方を変革し、社会に対する価値創造の最大化を目指す。

18年に打ち出したのは、まず経営のコックピット化だ。これはリアルタイムにグローバルの連結70社の経営状況が一元化し見えること。また、働きやすい会社を目指すのではなくやりがいのある会社を目指すために、IT化でバックアップし、働き方改革を推進する。公平なデジタル評価につなげる。

大体いい線まで来ており、20年10月にはグループ連結決算を2週間で、四半期決算を1週間でまとめられるようになった。また、異動時の引き継ぎ時間ゼロにも取り組んでいる。職務によるジョブディスクリプション(職務記述書)を活用してノウハウも蓄積する。

働き方改革で公平な評価

こうしたことを進めるのに必要なのは、まずトップダウンでスピード重視であること。現場に任せきりにせずトップ参加でPDCAを回す。また、目的は意識改革と業務改革なので、IT化は手段の一つとして位置づける。企業文化は外から購入できないので、全員参加で変革する。コンサルタントに頼り切りにならないということだ。

世の中のDXに惑わされないことも重要だ。少し前に、DXによって新しい製品や新しいビジネスモデルを通して競争の優位性を確立する、といったことが喧伝(けんでん)されたがどうだろうか。当社のようなBツーBの業界で、DXのみで新しい製品は出てくるだろうか。

ITには時間もカネもかかり、投資対効果を実証するのはなかなかむずかしい。私はITのトップも兼ねて企業文化を変えようとしているが、YDXの狙いは、正しくモノ・コトを創るために開発・生産からマーケティング、サポートなどまで「デジタル商品化チェーン」を回していくことだ。そのためにデータの動きを整理した連携基盤を作る。例えば連結の毎月200万件の売り上げと受注を処理するために約400項目あった勘定コードをグローバルに統一した。

このように、デジタル経営の実現のために、リアルタイムの経営管理とグループ一体の経営管理を進めている。デジタルデータの利活用や分析シミュレーションのためにグローバルデータベースを構築する。これによって業務プロセスの標準化・自動化を進めている。

DXを使った働き方改革については、各個人に合わせたスタイルで仕事をして、会社として公平に評価することをスローガンとしている。そのためには厳しくてもやりがいのある会社を目指し、権利と義務、平等と公平、自由と責任のバランスを取り、そこにデジタル評価を使う。

働き方改革は意識改革と業務改革であり、意識改革はドゥー・イット・ユアセルフ(DIY)で進め、業務改革はYDXを使って、成果(数字)が見えるようにする。公平な評価のために、デジタル評価制度と報酬制度を導入している。部門別のジョブディスクリプションで業務を標準化し、作業時間を報告する日報データの活用を16年に全社に拡大した。

また、16年に始めた全社員に毎月記名方式で実施しているアンケートは評価のこと、働きがいのことなどを毎月書いてもらい、回答率は95%を超えている。社員のコメントも多数寄せられ報酬制度の見直しにつなげている。直接DXとつながっていないかもしれないが、工場の負荷がどうなっているか、人の情報がリアルタイムにわかるというわけだ。

(2021/5/26 05:00)

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