社説/日銀利上げ見送り 日米の政策修正「時期」を注視

(2024/4/29 05:00)

過度な円安がいつ是正されるのか、日米金融当局による今夏以降の政策運営を注視したい。米国の政策金利の引き下げと日銀の追加利上げが今夏以降に実施され、日米金利差が縮小することが期待される。ただ中東情勢次第でリスク回避のドル高が進行しかねず、日本も自民党総裁選などの政治日程を見据えて利上げに慎重論も指摘される。政府・日銀の為替介入は効果が一時的で、日米の政策修正により為替相場を安定させたい。

日銀は26日の金融政策決定会合で、政策金利を0―0・1%に据え置き、毎月の長期国債購入額も維持することを決めた。3月の会合に続く利上げが見送られたことで、先週末の外国為替市場は1ドル=158円台と約34年ぶりの円安水準で推移した。植田和男総裁は、足元の円安が現時点で物価上昇率に影響していないと判断したようだ。

日銀は同日発表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、消費者物価指数の上昇率を24年度に2・8%、25年度と26年度を1・9%と、2%程度の物価上昇が維持すると見通す。24年春季労使交渉(春闘)の賃上げ率は連合の要求を満たす5%台で、33年ぶりの高水準にある。7月以降に実質賃金が増加に転じる可能性もあり、今夏にも追加の金融引き締めに踏み出すことが期待される。

ただ9月の自民党総裁選や、衆院解散・総選挙を見据え、自民党内には家計や中小企業の負担となる利上げに慎重論がくすぶる。住宅ローン金利や中小企業の調達金利の引き上げなどを懸念する。日銀には政治日程に影響されない政策決定を望む。

政府・日銀による為替介入はイエレン米財務長官がけん制しているほか、効果も一時的に過ぎないと留意する必要がある。

米連邦準備制度理事会(FRB)は30日からの会合で、政策金利を据え置く見通しだ。米国の1―3月期の実質成長率は7四半期連続のプラス成長で、堅調な経済によるインフレ再燃を警戒する。ただ市場では年内に1、2回の利下げが予測されており、タイミングが日銀の利上げと重なることが期待される。

(2024/4/29 05:00)

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