(2021/7/29 05:00)
量子コンピューターを産業にどういかすのか。世界で競争が始まっている。
米IBMの量子コンピューターが日本に上陸し、これまで“クラウド(雲)”上に存在していた実機を日本でも目の前で見られるようになった。量子技術の発展はもとより、次代を担う若手人材や子どもたちに与える意欲向上にもつながるものだ。
IBMは東京大学とのパートナー契約に基づき、川崎市幸区の産学交流拠点である「かわさき新産業創造センター(KBIC)」に、最新鋭の量子コンピューター「IBM Q(クアンタム)システムONE」を設置した。
東大が占有使用権を持ち、トヨタ自動車、日立製作所、JSRなど民間12社が活用への共同研究に参画する。素材開発や自動運転技術、創薬など幅広い用途での活用が見込まれるが、実用化にはまだまだ未解明な点も多い。早い段階から産学が連携して、具体的な成果に結び付けるのが狙いだ。
QシステムONEは約3メートル角の立方体の筐(きょう)体。心臓部の超電導量子回路は円柱状の筒に収納され、装置中央にぶら下がっているように見える。円柱状の筒の中は4重の魔法瓶のような構造で、一番下の部分は12ケルビン(マイナス261度C程度)という極低温状態にある。
IBMが実機を米国外に設置するのはドイツに次いで2台目となる。メンテナンスは日本IBMの専門チームが担当する。同社によると、実機を一般向けにも披露する見学会なども予定しているという。
子どもたちは、ぜひ一目見てほしい。量子力学と聞いてピンをこなくても、実機を目の当たりにすることで、科学技術への興味が湧き上がるはずだ。
1965年にIBMのメーンフレーム(大型汎用機)「システム/360」が日本に上陸した。前年の64年は東京五輪が開催された。時を経て、今度は2度目の東京五輪真っただ中に「夢の計算機」と称される量子コンピューターが日本に上陸した。日本の次代の強さにつながることを期待したい。
(2021/7/29 05:00)
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