デジタル化、セキュリティーの脅威も 外部環境変化に注意

(2023/11/22 12:00)

  • 豪ブリスベン港のDPワールドのコンテナバースで荷降ろしされるコンテナ船(ブルームバーグ)

デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)という言葉が登場して久しい。20年あまりの間にサプライチェーン(供給網)の世界でもモノづくりやモノはこびに関する個々の要素技術のデジタル化が急速に進行した。これらが相互に連携するための仕組みについてもデジタライゼーションが進行しているように見える。より効果的・効率的なサプライチェーンへと進化する未来が期待される一方で、不安材料もある。サイバーセキュリティー上の脅威について、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の観点から考察してみたい。

11月、豪大手港湾運営会社DPワールド・オーストラリアがサイバー攻撃を受けた。報道によればITシステムの通信遮断などの対応を含む港湾の機能停止は3日間に及んだという。この物流の要衝への攻撃によって影響を受けたコンテナ貨物は数万TEU(TEUは20フィートコンテナ換算)、数年ぶりに正常化したと思われていたホリデーシーズンのサプライチェーンに水を差された形だ。

この事件からはサプライチェーンが重要な社会インフラとして攻撃者に認識されている様子がうかがえる。同時に、管理者の存在しない分散型のシステム全体を防御する手段は限られていることが浮き彫りになった。

このようなマクロ外部環境の変化によって生じたエコシステムの問題状況に対して、別の外部環境の側面から介入する動きもある。米証券取引委員会は12月より重大なサイバーセキュリティーインシデントに直面した場合の開示義務、および毎年の決算情報開示の際のサイバーセキュリティー・リスク評価に関する情報開示義務を上場企業に課すという。技術進化の副作用として生じた問題状況に対して、社会ルールの整備によって予防的対応を促す動きといえるだろう。

モノづくりとモノはこびといった個々の要素が相互に関連する仕組みとしてサプライチェーンは存在している。このエコシステムを取り巻くさまざまな外部環境もまた相互に関連している。SCMでは両者を視野の内に捉え、変化に対峙(たいじ)する姿勢が求められる点に留意したい。

◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当

(2023/11/22 12:00)

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