社説/東日本大震災12年(下)BCPで事業課題の洗い出しを

(2023/3/10 05:00)

地震大国の日本。政府の地震調査委員会によると、30年以内に首都直下地震が発生する確率は70%、南海トラフ地震は70―80%(20年以内の発生は60%程度)に達する。阪神・淡路大震災や東日本大震災を経ても、事業継続計画(BCP)を策定している企業は多くはない。これら大震災の記憶を風化させないことは、震災を「自分ごと」と捉えることにつながる。「3・11」を前に、実施すべき防災・減災対策を確認しておきたい。

東京都は2022年5月、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直した。マグニチュード7・3で首都中枢機能を直撃する「都市南部直下地震」の場合、死者6148人、けが人9万3400人を数え、約8万2200棟の建物が全壊、約11万2200棟を焼失する。帰宅困難者は453万人に達する。

被害想定は予測数字を示しただけでなく、時々刻々と変化する被災後の社会のシナリオも描いている。例えば鉄道。地震発生から3日後までは被災・点検により都内の運行が停止。道路寸断や渋滞でバスなどの代替も困難。1週間後からは順次、運行が再開するが、多くの区間で運行停止が継続し、復旧まで1カ月以上となる可能性も。こうしたシナリオに基づくBCPを企業は策定しておきたい。

東日本大震災の際、首都圏では多数の徒歩帰宅者が道路渋滞を招き、救急車・消防車などの緊急車両が通れない事態も起きた。政府はこの反省からガイドラインをまとめ、安全確認が取れるまで従業員を一斉に帰宅させず、帰宅困難者は3日程度は社内にとどめるよう要請している。企業は防災グッズや食料の備蓄、さらに震災時の対応を従業員に周知する必要がある。

東京商工会議所の22年5月調査によると、BCPを策定している大企業は54・2%、中小企業は22・6%にとどまる。供給網の寸断に備えた調達の多様化や、コロナ禍で導入企業が増えたテレワークなど、中小企業も大企業と同様の対策を検討しておきたい。BCPの策定は、潜在的な事業上の課題を浮かび上がらせる効果も期待できよう。

(2023/3/10 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン