[ 自動車・輸送機 ]

未来の車を支えるテクノロジー(中)電機メーカー台頭−自動運転の“陣地取り”合戦

(2017/10/31 05:00)

  • デンソーは自社製品を幅広く搭載した「モックアップカー」を出展

【日本は最重要】

「日本は自動運転ビジネスを広げる上で最も重要なマーケットの一つだ」。独コンチネンタルのエルマー・デゲンハート会長兼最高経営責任者(CEO)は東京モーターショーの会場内で力強く語った。

同社CEOが東京モーターショーを訪れるのは4年ぶり。車載センサー、電子制御ユニット(ECU)など自動運転に必要なハードやソフトウエアをそろえる総合力を武器に日系完成車メーカーとの取引を拡大している。日本滞在中のデゲンハートCEOのスケジュールは車メーカーとの商談で詰まっている。

世界最大手の独ボッシュも車載センサーを軸に自動運転向けのシステム提案を強化しており、約10億ユーロ(約1300億円)投じてセンサーに使うウエハー工場を新設する。車部門を統括するロルフ・ブーランダー取締役は「自動運転には従来にない新技術が必要になり、系列企業との取引だけでは対応できなくなってきている」と、日系メーカーとのビジネスが増えている理由を説明する。

欧州勢の攻勢に対し日本勢もこれまで以上に自動運転分野への投資を活発化している。デンソーは20年代前半の実用化を目指し、「データフロープロセッサー(DFP)」と呼ぶ新領域のプロセッサーを設計・開発する新会社を東京都内に9月に設立した。

DFPは自動走行で必要な判断処理が反射的にできるのが特徴で、消費電力や発熱も抑えられるため車載向け半導体に適している。デンソーの有馬浩二社長は「中央演算処理装置(CPU)、画像処理演算装置(GPU)にDFPという選択肢を加え、安心な自動運転を実現していく」と宣言。電動化を加えた2分野で20年までの3年間に合計約5000億円の研究開発費を投じる。

世界で初めて駐車支援システムを実用化したアイシン精機は専用駐車場での全自動駐車システム「自動バレー駐車」を20年に実用化する方針だ。マンションやホテルの駐車場でスマートフォンを操作し無人のクルマを呼び出すといったことが可能になる。伊原保守社長は「駐車の煩わしさから解放される」利点を強調する。

車部品各社が自動運転分野でしのぎを削る中、近年存在感を強めているのが電機メーカーだ。三菱電機は準天頂衛星「みちびき」をはじめ自社で衛星を手がける強みを活かし、衛星信号を使って高精度に自車位置を測定して走る「インフラ型」と呼ぶ自動運転技術を提案。車載カメラやセンサーだけでは認識しきれない濃霧や雪道など視界不良な場所でも安全に自動走行できる利点を訴求し、車メーカーへの採用を目指す。

【グループと連携】

日立オートモティブシステムズ(日立AMS)はステレオカメラをはじめとする基幹部品の提供に加え、親会社の日立製作所が持つ社会インフラや情報通信関連の技術資産を活用したソリューションの展開を本格化する。「日立グループとの連携を強め他のサプライヤーに対する競争優位性を築いていく」(関秀明日立AMS社長)。

自動運転車は20年前後に本格的に実用化される見通しで、車部品メーカーに電機メーカーが加わった自動運転分野の覇権争いが激しくなる。今後はより自社の個性を生かした付加価値の高い技術提案ができるかどうかが勝負の分かれ目になりそうで、技術補完や強みを伸ばすための戦略的提携も増えていきそうだ。

(2017/10/31 05:00)

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