社説/東日本大震災13年 福島復興と「廃炉」確実な歩みを

(2024/3/11 05:00)

2万2000人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災の発生から11日で13年になる。犠牲者の冥福を祈りつつ、記憶を風化させてはならぬとの思いを新たにする。13年の歳月をかけて復興が進んだ一方、課題も残る。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業を想定通り進捗(しんちょく)させ、福島県の産業振興もこれまで以上に進める必要がある。震災復興で得た貴重な知見は能登半島地震の復旧・復興にとどまらず、ウクライナの戦後復興にも役立てたい。

復興庁によると、2011―22年度の12年間に投じた復興関連費は約40兆円。この間、インフラ整備や宅地整備などのハード事業はほぼ完了し、被災3県の営農面積や製品出荷額、水産加工施設はほぼ震災前に戻った。福島県の避難指定区域も県全体面積の2・4%(震災発生当時は約12%)まで縮小した。

課題も残る。原発事故に見舞われた福島県の本格復興だ。同県の沿岸漁業の水揚げ量や営農再開面積は震災前に及ばない。23年8月には福島第一原発の処理水の海洋放出が始まり、中国が日本産水産物の全面的な輸入停止に動く“風評被害”も受けている。同原発2号機の溶融燃料(デブリ)の試験的取り出しも度重なる延期に見舞われた。

中国の科学的根拠がない政治的な措置には辟易(へきえき)とするが、台湾や米国への輸出増で対応したい。東電は廃炉期間を41―51年とした中長期ロードマップに基づき、作業を遅滞なく進めてほしい。廃炉までの道のりは長いものの歩みは確実に進めたい。

福島県の産業振興も進める必要がある。23年4月にロボットや水素エネルギー、農林水産、医療などの先端の研究開発を産業化する「福島国際研究教育機構」が発足した。福島水素エネルギー研究フィールド(福島県浪江町)は26年度に、脱炭素への切り札とされる水素供給の商用化を目指す。福島の復興を日本再生につなげる必要がある。

能登半島地震が1月に発生し2月には日ウクライナ経済復興推進会議が開かれた。東日本大震災の経験は能登、そしてウクライナ復興にも生かしたい。

(2024/3/11 05:00)

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