(2022/7/14 05:00)
岸田文雄政権は、電力の安定供給と脱炭素社会の実現に向けて、痛みを伴う改革にも踏み込んでもらいたい。
日本の電力事業は“綱渡り”の運営が続く。6月末に猛暑に見舞われた東京電力管内では4日連続で「電力需給ひっ迫注意報」が経済産業省により発令された。家庭・企業の節電により停電を回避するという電力供給力の脆弱(ぜいじゃく)性を露呈した。
電力の供給力不足は、2011年の東日本大震災で原子力発電所を停止した一方、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い老朽火力発電所を休廃止した影響が大きい。休廃止といっても、電源構成の8割程度は依然として化石燃料に依存し、日本のエネルギー自給率は1割程度に過ぎない危うい状況にある。
ウクライナ情勢により化石燃料の調達難と価格高騰に見舞われ、日本をはじめ世界はエネルギー安全保障が脅かされている。先進7カ国(G7)はロシア産石油への上限価格の設定で合意した一方、ロシアはドイツへの天然ガスの供給を停止し、日本の大手商社が出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」も事業主体をロシア企業とする大統領令が出され、先行きが懸念される。
日本は国のエネルギー基本計画で示した電源構成の最終着地点を維持するにしても、ウクライナ情勢の長期化を見越し、一時的・緊急避難的に電源構成をあらためる柔軟な運用を検討する必要がある。
政府は再生可能エネルギーの主力電源化を進めつつ、自治体任せの原発再稼働の議論を主導する役割を担いたい。政権は向こう3年間、国政選挙がない「黄金の3年」を迎えた。議論の前面に立ってもらいたい。脱炭素にも資するはずだ。
日本は脱炭素社会の実現に向けて、今後10年で官民協調で150兆円超を投資する計画だ。政府は民間投資の呼び水となる20兆円程度の資金を先行調達するが、財源問題が残る。痛みを伴い、産業界が警戒する炭素税などのあり方をめぐり、岸田文雄政権は年末に向けて主導力を発揮してもらいたい。
(2022/7/14 05:00)
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